社会科学とTech

事業会社でエンジニアをしながら、政治学と社会学の勉強をしています。

大昔に調べた日大カザルスホールの行方

はじめに

日大元幹部ら提訴を検討 林真理子理事長 カザルスホールは復活へ:朝日新聞デジタル

 色々な騒動があり理事長が変わった後、カザルスホールがついに開放されるという記事が昨年出ましたね。これを機に学部生の頃にカザルスホールの行方を調べたことを思い出しました。

 元の文章を書いたのは2018年、大学2年生の拙い文章ではありますが大学図書館にあった日大広報を読み漁りながらまとめたものです。まあ大した情報はありませんが、どういう歴史があったのかを知るにはちょうど良いと思います。そういうわけではてぶに投稿してみようと思ったわけです。

第一章 瀬在総長によるお茶の水キャンパス開発計画

 日本大学は平成13年7月19日の理事会で、主婦の友社跡地を約480億円で正式購入することを決定し、26日に同社と売買予約計画を結んだ。また、日本大学はカザルスホールについては解体せずに存続させ、ホールを学外にも利用できるように検討し、カザルスホール以外の建物は取り壊し大学施設を建設すると発表した。

 具体的な建設計画について日本大学は医学部附属駿河台病院、歯学部附属歯科病院の移転などを検討していた。また、駿河台地区に所在する医、歯、理工三学部はじめ、大学の全学部および付属高校、校友も利用できるような共同ビルが建てることを考えていた。*1

 平成14年になると、都心3拠点部会(三崎町 駿河台 市ヶ谷)の駿河台地区委員会での論議主婦の友社跡地(以後お茶の水キャンパスと称する)の開発は多くの学部が教学のために利用できるような20階あるいは30階の高層ビル案が現れる。日本大学は周辺地域の中ではかなり高層なビルを建築しようとしていた。(向かいにあるリバティータワーは23階)*2

 平成14年 9月20日付けの日本大学広報で田中常任理事は、学部の垣根を超えた交流、一つの日本大学という真の総合大学の姿が求められている。と大学の統一へ強い意思を表明し、*3日本大学としてもお茶の水開発は共学研究機関の総合化という大きなテーマで対応させるものだと考えていた。*4

 平成13年10月9日に、瀬在総長が松尾翼弁護士、お茶の水スクエアの石川代表取締役らとマルタ・カザルス・イストミン夫人へ表敬訪問した際に、カザルスホールは存続させ、その他建物については解体し記念碑的となる14学部と付属高校が利用できる施設を設ける方針を伝えていた。*5 

第二章「小嶋総長によるお茶の水キャンパス開発の見直し」

 平成17年8月、瀬在派は失脚し代わりに小嶋総長が就任した。彼は瀬在総長の政策に否定的であった。総合性を強めようとした瀬在に対し、小嶋は否定的だった。分散キャンパスはむしろ災害対策になって良いといった、キャンパス統一といった流れには否定的であり、本部直轄型の大学は不可能と一喝し学部の個性を重んじるようにすべきであると主張した。またお茶の水キャンパスに関しては急ぐ必要はないという方針だった。*6沼野副総長も同様に、総合性のメリットには理解を示しつつも、過度に総合性にこだわるべきはないとし、教育研究の現場はあくまで学部であると主張した。

 この時、田中常任理事は体制変更後も常任理事に再任していた。田中は総合性に否定的な空気が多い中においても「日大ファミリーのため」と一つの日大を主張し続けた。*7

 お茶の水キャンパス整備は全面見直しなり、支出は25億2800万円支出減、120周年の節目に実現する予定となった。*8

 平成19年、お茶の水キャンパスはどういう位置づけ、本学のシンボル等、広く意見を㋄7日から14日の間で公募された。全体で、78件の応募、個人51、グループは27、計179人から意見が集まった。提案の数は103個で、医療関係が37、日大シンボル化、記念館関係が20、国際関係学部の移転が6、学部関係者で分けると医学部27、理工学部から17だった。提案については建設計画委員(仮称)で大学が内容を検討していくとされた。*9

 小嶋総長は日本大学広報で、「専門家によって公募した意見を整理して、委員会で検討していく。具体的な建設コンセプトを考えるまでに半年から1年かかかる。いずれにしても日大全体のシンボルになる建物になるため、慎重かつ大胆にさらにスピーディーに取り組んでいく予定」と語った。*10

 そしてついにお茶ノ水キャンパス活用構想計画検討委員会が立ち上がる。委員会は基本計画の作成と、学外の専門部署に発注して基本設計実施に向けて動く。竹内一樹理事を委員長に13委員、2幹事で構成され、その下に4部会(医歯薬系、入居施設検討、資金計画検討、技術的検討の各部会)が編成される。お茶の水キャンパス開発を日本大学の大事業として位置づけ、すべてを明らかにしつつ動いていくと発表した。*11

第三章「田中理事長の時代、本格的なお茶の水開発へ」

 小嶋総長は総長選挙に敗北し、代わりに酒井健夫が総長に就任した。同時に、常任理事であった田中英寿が理事長に就任する。新体制は教学全体を統括する部署の設置と。駿河台病院は総合大学として象徴的な建物に建て替えること、お茶の水キャンパスは懸案事項とした。*12

 平成22年になってやっと3度にわたる臨時理事会を経て、お茶ノ水キャンパス開発については新病院を含む総合開発を行うことが正式に決定された。*13また、同年3月にカザルスホールの一般開放が終了した。

 平成23年7月15日、日本大学広報上で駿河台新病院の建築概要が明らかにされる。完成は125周年に合わせる予定とされた。*14

 平成24年、松村正治が委員長を務めるお茶ノ水キャンパス総合開発検討委員会の中間答申が10月5日と11月2日の両日に報告された。カザルスホールにある法務研究科を三崎町の通信教育部の建物に移転させ、法学部と施設を共有し効率化を図り、三崎町にある通信教育部は市ヶ谷に移転させる。カザルスホールは理工学部平成27年初頭から運用し、新ビル建築中の避難先にする。また、歯学部新病院を建築することが発表された。

 田中理事長は全体の工事完了後、カザルスホールがどのようなものになるかについては、新しい学部を持っていく等検討しているとした。理工学部にも医療系の専攻があるため、関連した学部を移転し、御茶ノ水キャンパスに医療系施設をまとめるのも一つの手であると述べた。*15

 お茶の水キャンパス総合開発計画では薬学部も自習室棟の計画も持っていること、理工学部と歯学部が共同でツインタワーを建築することも明らかにした。田中理事長は「医療系学部が集約する新キャンパスになると思う」と広報紙上で述べた。*16

 平成30年(2018年)現在、日本大学新病院は完成し、9月に理工学部ツインタワーの南棟が使用開始(7月に完成)、10月に歯学部新病院が開院する。カザルスホール(お茶の水校舎)は理工学部が図書館等に用いていたが、南棟完成に伴い代わりに歯学部が入居する。

 完全に歯学部新校舎が完成するのは平成32年(2020年)、新校舎には歯学部1号館の機能、歯学部三号館の講義室と実習室の機能が入る。*17

 歯学部3号館はサークル部室と食堂のみが残る形になるが、どのように今後活用されていくかについては書かれていない。2018年度事業計画書では、老朽化した1号館の建て替えと歯学部3号館4号館を含めたキャンパス作りは検討されているため、いずれ何か具体的な告示されるだろうと考えられる。*18

 2017年度事業報告書では、お茶の水キャンパス・ランドマーク構想と位置づけ「平成 30 年 7 月竣工予定の南棟(仮称)をまず機能させる必要がある。その一方,都市型機能を活かした教育研究キャンパスを目指すためには,現在延期となっている北棟(仮称)の建設が不可欠である。当面は南棟(仮称)を中心とした事業計画の構築及び北棟(仮称)の基本計画の見直しが必要である」とのような考えを明らかにしている。*19

 

まとめ

 瀬在総長が購入した主婦の友跡地は、総長のもとで共同ビルを建築することになったが、小嶋総長のもとで見直され停滞し、酒井総長と田中理事長下で開発が進んだ。

 ただ、カザルスホール自体の行方については明らかになっておらず保留状態となっている。ホールを含んだ開発はお茶の水全体のキャンパス整備が終盤になったころに行われる可能性がある。今後の行方を見守りたい。

加筆

 そして2023年、ついにカザルスホールが2026年に復活することが発表されました。この間久々に明大通りを通ったらカザルスホールの外壁がきれいになっていました。昨今いろいろな騒動があり大学への疑念を投げかけられていますが、私は林理事長にとても期待しています。

 今は別の大学に社会人院生として入学してしまっていますが、一校友として日本大学の未来を信じたいと思っています。カザルスホールの復活が日本大学の改革のシンボルとなりますように。

 

参考文献

日本大学広報部編(2002年)「日本大学広報縮刷版」Vol.8

日本大学広報部編(2006年)「日本大学広報縮刷版」Vol.9

日本大学広報部編(2010年)「日本大学広報縮刷版」Vol.10

日本大学広報部編(2014年)「日本大学広報縮刷版」Vol.11

桜歯ニュース 平成27年1月15日第185号

http://www2.dent.nihon-u.ac.jp/news/news185/news185.pdf(2018年7月6日最終閲覧日)

日本大学新聞社(2018)「日本大学新聞縮刷版」

日本大学「2018年度事業計画書」 http://www.nihon-u.ac.jp/uploads/files/20180329170452.pdf(2018年7月6日最終閲覧日)

日本大学「2017年度事業報告書」 http://www.nihon-u.ac.jp/uploads/files/20180614121935.pdf(2018年7月6日最終閲覧日)

 

*1:日本大学広報 平成13年10月1日 第474号(2)

*2:日本大学広報 平成14年7月15日第486号(1)

*3:日本大学広報 平成14年9月20日第487号(2)

*4:日本大学広報 平成14年10月15日第489号(1)

*5:日本大学広報 平成13年11月15日475号(2)))平成15年2月8日付けの日本大学広報において、カザルスホールは音楽芸術関係の資料などを備えた建物にすると発表した。((日本大学広報 平成15年2月8日 第487(8)

*6:日本大学広報 平成17年8月5日第531号(1)

*7:日本大学広報 平成17年9月29日532号(2)

*8:日本大学広報 平成18年4月14日第543号(1)))なお、駿河台地区にある歯学部4号館はこの時期(平成18年)に完成した。工費は8億5300万で、当時の歯学部長は大塚吉兵衛だった。((日本大学広報 平成18年6月16日 第545号(6)

*9:日本大学広報 平成19年10月15日565号(1)

*10:日本大学広報 平成20年1月9日第568号(1)

*11:日本大学広報 平成20年2月15日 第570号(1)))((日本大学広報 平成20年6月1日 第571号(1)

*12:日本大学広報 平成20年9月30日 第578号(1)))((日本大学広報 平成20年10月8日 第579号(1)

*13:日本大学広報 平成22年2月15日 第601号(1)

*14:日本大学広報 平成23年7月15日 第623号(1)

*15:日本大学広報 平成24年12月15日 第643号(1) 田中理事長の言葉については一部要約

*16:日本大学広報 平成26年1月9日第659号(2)

*17:桜歯ニュース 平成27年1月15日第185号 5-7

*18:2018年度事業計画書

*19:2017年度事業報告書